十一月十日   悲しいことを書かなくてはいけない。  湘南のベテランアングラーがウェーディング中
          事故で亡くなった。   ライフ・ジャケットの着用に関する話し合いが今日も行われた。
          僕の父も海で死んだ。  叔父もそうだ。  幼馴染も。  本当の死因はわからない。  
          人の死に直面すると、そんなことはどうでもいいことに思える。  永久に此の世から
          姿を消すのだ。  人間の力なんて、ちっぽけなもの。  人間は生まれた時から、死に
          向かって時を重ねるという事実。  
          しかし、だ。  残された人間は、悲しい思いにくれる。  残された人間に、せめて出来
          るだけのことはやったのだという証を残して欲しい。

          今回の事故。  ライフ・ジャケットの着用の有無。  僕は海での素潜り大好き人間だ。
          ネオ・プレーンのウェーダーを身に付けて転倒しても、大丈夫だと思っていた。 いや、
          今でもそう思っている。  

          そんな僕が、今年の秋から最も信頼できる、最も邪魔くさいライフジャケットを着用して
          いる。  心配されることが苦手な性分だから。  

          悲しいことって、少ないほうがいいじゃないか。